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コラム
ナイトタイムエコノミーとは。地方都市が夜に稼ぐ理由と、小松の勝ち筋
日本の夜間経済は年約10兆円に達し、コロナ前を超えた。ただし恩恵は大都市に偏る。地方都市が夜に稼ぐ鍵は、新しい夜をつくることではない。すでにある夜を可視化し、民間が続けられる仕組みに変えることにある。
日本の夜間経済は、年約10兆円
矢野経済研究所によると、2024年度のナイトタイムエコノミー市場(21時〜翌5時の末端消費額ベース)は9兆8,459億円、前年比3.4%増。2025年度は10兆204億円に達すると予測されています[1]。居酒屋・バー、コンビニ、ドラッグストアなど複数の1兆円規模の市場が回復を牽引し、市場はすでに感染症拡大前の水準を超えました。夜は「余暇」ではなく、10兆円の産業です。
夜は、観光政策の積み残しだった
政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」で訪日消費額の拡大を掲げ、観光庁は夜間帯の消費が弱い点を課題に挙げてきました[2]。2024年の訪日外客数は過去最多を更新し、3,000万人を超えました[3]。しかし旅行者の多くは、日没後に使う場所を持ちません。昼に観光し、夜はホテルに戻る。この「夜の空白」を埋めれば、滞在時間と消費額は伸びます。
ロンドンは夜に、年約400億ポンドを生む
夜を産業として設計した都市は、規模が違います。ロンドンでは夜に働く人が約130万人にのぼり、就業者の約4人に1人が夜間に働いています[4]。夜間経済の付加価値は、乗数効果を含めて年約400億ポンド規模とされます[4]。主役は飲食、交通、医療です。夜を「治安対策の対象」ではなく「経済の時間帯」として扱う発想が、規模の差を生みます。
地方の夜は、補助金頼みでは続かない
日本でも東京都、港区、宇都宮市などがナイトタイムエコノミー補助金を設けています[5]。ただし単発イベント型の施策は、補助が切れると止まりやすい。地方はさらに担い手が少なく、行政の単年度予算では継続が困難です。イベントで人を呼ぶ前に、夜に開いている店が続いていける土台がいります。
地方都市の勝ち筋は「すでにある夜を可視化する」
地方に足りないのは、新しい夜ではありません。小松駅前だけで、夜に開く店は100〜140軒あります。スナック、小さなバー、居酒屋。その多くは大手グルメサイトや地図アプリに情報がなく、常連以外には存在が見えません。ここを一軒ずつ可視化すれば、来店の入口が増えます。ゼロから箱をつくるより、すでにある店を残すほうが、地方では速く、続きます。
評価順に並べるほど、個人店は埋もれる
大手のグルメサイトや地図アプリは、口コミ投稿の多い店を上位に表示します。裏を返せば、投稿の少ない店はほぼ表示されません。夜の個人店の多くは常連で成り立ち、ネット上の投稿が乏しい。評価順に並べるほど、こうした店は埋もれていきます。日本政策投資銀行も、ナイトタイムエコノミーの地域定着には、単発の集客ではなく担い手と情報基盤の整備が要ると指摘しています[6]。当社は点数を実装せず、店主の経歴、営業時間、席数、価格帯、初来店で入れるかどうかを並べます。優劣を決めるのではなく、選ぶための情報を渡す。地方の薄い商圏で一軒でも多く残すための設計です。
小松での実装
当社は「小松の夜」で、駅前800m圏の夜間営業店を、点数評価に頼らず掲載します。可視化したいのは、店の情報だけではありません。街と人、そして店の雰囲気を、そのままデジタルに残す。誰がどのように営む店かを情報の中心に置き、初来店でも入れるかどうかまで載せる。夜の一軒目を選べる状態をつくり、人の回遊を生みます。行政の補助ではなく、民間が続けられる形で運営する。夜は目的ではなく、街全体に人を戻す起点です。
出典
- 矢野経済研究所「ナイトタイムエコノミー市場に関する調査(2025年)」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3937 - 観光庁「明日の日本を支える観光ビジョン」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/suishintaisei/vision_koso.html - 日本政府観光局(JNTO)訪日外客数統計
https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/ - Greater London Authority「London at Night/Night-time work in London」(GLA Economics)
https://data.london.gov.uk/blog/london-at-night-an-updated-evidence-base-for-a-24-hour-city/ - ジチタイワークス「ナイトタイムエコノミー推進の事例」
https://jichitai.works/articles/2961 - 日本政策投資銀行(DBJ)「地域へのナイトタイムエコノミー定着に向けて」(2025年3月)
https://www.dbj.jp/topics/investigate/2024/html/20250313_205842.html